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垂水市の釣り場


垂水市海域 ― 湧水性潮境と回遊圧が交錯する“動のフィールド”

 垂水市の海は、錦江湾の中部西岸、桜島の南麓に面して広がる。岸近くから一気に深く落ち込む急深地形は、閉鎖性の湾内にありながら外洋的な水深変化を有しており、桜島由来の火山礫・溶岩流・火山岩が形成する岩礁帯は、変化に富んだボトム構造を形づくる。この環境は、メジナ・ブダイ・カサゴ類といった岩礁系の定着魚に安定した生活圏を提供している。
 さらに、このエリアの特徴として一部の釣り人・研究者が注目しているのが、湧水が海域環境に影響を与えている可能性だ。桜島周辺では火山体を通過した地下水が湧出しており、その淡水と海水の密度差・温度差が表層に水塊境界(潮目)を形成する場面がある。この潮目は、プランクトン・イワシ・小アジなどのベイトが沿い、それを捕食するカマス・タチウオ・シーバス・青物魚の回遊ルートになっていると考えられている。これは現在のところ観察・経験則に基づく仮説モデルであるが、垂水沿岸では他エリアより潮目形成が可視的であるとの声もあり、釣果との相関性が検討されている段階だ。
 釣り方にもその性格が色濃く反映される。垂水では一見“生命感が薄い”状況から突然時合いが訪れることが珍しくなく、そのスイッチとなるのが潮境の接近・ベイト流入・水温差の変化とも考えられる。そのため、仕掛け・ルアー・操作性は固定化せず、対応幅を残した構成が合理的だ。港湾部ならアジング・エギング・サビキ、岩礁域ならフカセ・ショアジギング・遠投カゴが軸となり、状況次第ではライトミノーやトップで回遊待ちを狙う戦略も成立する。特に秋〜冬は青物・タチウオの接岸圧が増すため、軽量ジグ+プラグ対応の二本柱が現実的だろう。
 まとめるなら——垂水市の海は、「読めば結果が出るが、読めなければ沈黙する海」。静と動が交互に現れ、釣果は潮境・回遊・水塊変化といった“小さな兆し”を見逃さず捉えられるかどうかにかかっている。鹿屋の“安定型の応答を読む釣り”に対し、垂水は“変化を待ち、刺す釣り場”であり、攻めの姿勢を前提としたフィールドと言える。
【脚注】
※湧水性潮境(ゆうすいせい・しおざかい)本稿では、海底・沿岸域から湧き出す地下水が海水と接することで生じる温度差・塩分差・密度差に基づく水塊境界を示す言葉として用いた。現象自体(地下水湧出や水塊境界の形成)は海洋学上確認されているが、垂水沿岸でこの境界が魚の回遊線として機能する可能性については観察と推測に基づく仮説段階であり、正式な研究用語ではない。

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エリアマップ

垂水市の釣り場マップ

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牛根堺港

牛根堺港


静かな湾と回遊線が交差する
“半外洋型フィールド”

 鹿児島県垂水市の北部に位置する牛根境港は、国道220号沿いでアクセスが良く、港内は静かで釣り座が確保しやすい。一見すると典型的な湾内港のように見えるが、その海の性格は単純ではない。港の外側は、岸近くから水深が落ち込む急深地形となっており、桜島の陰にありながら、日によっては潮が走り、水面にヨレ・反転流・ベイトの偏りが現れる。この“静と動の切り替わり”が、牛根境港の釣りを特徴づけている。
 港内ではアジなどの小魚が入りやすく、サビキ・アジング・フカセ・チニングといった手堅い釣りが成立する。一方、防波堤の外向きは性格が一変する。沖15m付近のタナ落ち(かけ下がり)は潮の通りが変わる層で、マダイ・良型メジナが付きやすいラインとして知られる。さらに沖側、約30m付近の二段目の落ち込みは、底質が荒れ、岩混じりのハードボトムとなっており、シーズンや状況次第ではイシダイの狙い場にもなりうる。
 回遊魚の入り方は安定型ではなく、条件依存型。ベイトが差した日や、水温・潮色・風向が噛み合ったタイミングでは、シーバスや青物魚が姿を見せることもある。つまり、常に釣れる港ではなく、「動く日を拾う港」。港内の穏やかさと、港外の変化が表裏一体となった、垂水らしい“半外洋型の性格”が強く表れる場所である。
 総じて牛根境港は「釣果が条件に左右される港だが、噛み合った日は一段上の展開が生まれる場所」。湾の安定感を持ちながら、外洋由来の回遊と水塊変化が時折顔を出す――そんな二重性が、この港を面白くしている。

浮津港

浮津港


落ち着いた港と
回遊タイミングが鍵となるフィールド

 鹿児島県垂水市南部に位置する浮津港は、規模は大きくないものの足場が安定しており、落ち着いた釣りができる港である。港内は干満差や風の影響を受けにくく、チヌ(クロダイ)・ボラを中心に狙える環境が整っている。フカセ釣りや落とし込み、軽量なルアー釣法などが現実的なアプローチとなり、季節に関係なく成立しやすい。
 一方、防波堤の外向きや港周辺の深さが変化するラインでは、状況次第でスズキ(シーバス)・マダイ・チヌ・アジといった回遊性の魚が接岸することがある。この傾向は常時ではなく、潮色・風向・水温・ベイトの入り方といった複数条件が重なったタイミングで現れやすく、浮津港は「条件次第で展開が変わる港」という性格を持っている。
 また、港の北側は砂利浜が広がり、海底が砂地となるため、シロギスを狙える釣り場としての側面もある。これにより、港の内外・隣接浜でターゲットが大きく変わる地形的特徴が生まれ、狙い方の幅は意外と広い。
 総じて浮津港は、港内でチヌを軸に据えつつ、潮や季節の変化に合わせてスズキ・マダイ・アジなどの回遊を拾える“静かに状況を読む港”。派手な釣果が出る日と静かな日がはっきり分かれるため、その差を読み解く楽しさがあるフィールドとなっている。

二川漁港

二川漁港


“外向き”で勝負するマダイ狙いの港

 二川漁港は規模こそ小さいものの、外向きのポイントに魅力がある港だ。港内は水深が浅く釣りとして成立しづらいが、堤防先端や沖向きでは潮が効く場面があり、狙える魚の幅が一気に広がる。
 この港で最も注目したいターゲットはマダイで、遠投カゴ釣りなどの外海寄りのスタイルが成立する。状況次第では良型の実績もあり、狙い方がハマれば答えが返ってくるフィールドだ。
 季節や潮色次第ではアジやサバが回る日もあり、群れが入ったタイミングを捉えれば数釣りも可能。ただしこれは安定型ではなく、ベイト・潮流・風向といった条件が揃ったときに発生する変動型の釣り場といえる。
 二川漁港は、一日中釣れ続くような港ではなく、“条件とタイミングを掴んで刺す港”だ。沖向きで潮を見ながら投げ続ける姿勢が釣果に直結する。

総評:手軽に来られる港ながら、狙いを絞ればマダイを本命にできる場所。外向きで潮の変化を読みながら攻める釣りが似合う港である。

太崎観音崎

太崎観音崎


アオリイカを軸に、季節で表情が変わる地磯

 太崎観音崎は、垂水市南部の海岸線に突き出した地磯で、港とは異なる自然の潮流と海底変化が楽しめるポイントだ。アクセスは比較的落ち着いているが、磯歩きが前提となるため、足場と海況の確認は欠かせない。
 この場所で特に狙いやすいのはアオリイカで、エギングやアジを使った泳がせ釣り(ヤエン含む)が主なスタイルとなる。潮が寄り、藻場や地形変化が絡むタイミングでは型が望める可能性があり、条件次第では回遊待ちの展開も期待できる。
 一方で、磯らしい地形や潮通しの良さから、根魚や回遊系の魚種が寄る可能性もある釣り場であり、季節・潮・風向きによっては、青物や底物など他のターゲットが姿を見せる余地も考えられる。確たる情報が多いわけではないが、周辺の地形・実績から見れば、将来性や探索性のあるポイントと言える。
 状況が読める釣り人ほど結果が出やすい傾向があり、「狙う魚を決めて入る」というより、その日の条件を見て釣り方を切り替えるスタイルがよく合う。

総評:太崎観音崎は、アオリイカを中心に据えつつ、季節と潮によって他魚種の可能性も残された“探りがいのある地磯”。条件が揃ったときに訪れる変化を楽しめる、余白のあるフィールドである。

牛根麓漁港

牛根麓漁港


アジを軸に、状況次第で幅広い魚種を狙える港

 牛根麓漁港は、垂水市の沿岸にある小規模な港だが、周囲の地形や潮流の影響により、釣れる魚種の幅が広い点が特徴となっている。足場は落ち着いており、ライトタックルで手軽に始められるため、地元釣り人からの利用も多い。
 この港で特に人気のターゲットはアジで、季節や回遊タイミングが合えばサビキや軽いルアーで数釣りが期待できる。一方で、魚種の層は浅くなく、マダイを狙う釣り人も一定数いることから、単なる“手軽な港”ではなく、条件が揃えば展開が変わる釣り場としての側面も持つ。
 釣果として挙がる可能性のある魚には、チヌ・キチヌ・コロダイ・ネイゴ・ヤズ・ブリ・ネンブツダイ・サバ・ヒラメ・シロギス・カサゴ・アオリイカなどが含まれ、ターゲットの幅が広い。港規模に対してこれだけ多様な魚種が狙えるのは、外向きの潮流が効くタイミングに魚の通り道が生まれるためと考えられる。
 ただし、状況が動かない日は静かなまま終わることもあり、「読めば伸びる港」「条件待ちの釣り場」という位置づけがしっくりくる。

総評:牛根麓漁港は、アジを軸にしながら、状況が整えばマダイや青物に広げられる“余地のある港”。手軽さと期待性が共存するフィールドである。

牛根冷凍団地

牛根冷凍団地


 牛根冷凍団地は、1914年の桜島大噴火による陸続き化の後に形成された地形の一部で、現在は垂水市と桜島の間のワンド状地形に位置しています。牛根大橋の南側、桜島との地続きになった溶岩地帯の北縁にあたり、地形的にも歴史的にも特徴のあるエリアです。

釣り場の特徴

 このエリアは知名度こそ高くありませんが、「知る人ぞ知る」チヌの良場として知られています。特に、**大型のチヌ(クロダイ)**を狙って通う地元釣り師も多く、フカセ釣りやダンゴ釣りでじっくりと攻めるスタイルが効果的です。
 釣座は主に溶岩由来の黒いゴロタ石が混じる岸辺にあり、画像に見られるように、自然の岩場に松林が迫る静かな環境が広がります。釣座となるのは、基本的に桜島側の黒い溶岩礫が堆積した自然斜面で、足場はやや不安定ながら、石積みやゴロタに潜む良型のチヌ・メジナが狙えます。

釣果例とシーズン

実際に35cm級のメジナや、45cmオーバーのチヌといった釣果実績もあり、腕次第で良型を狙える場所です。潮通しは比較的穏やかで、魚の警戒心も高めなため、丁寧な釣りが求められます。

景観・雰囲気

 背後には松林と黒いゴロタの溶岩帯が広がり、前方には湾奥の静かな水面と養殖筏や牛根冷凍団地の護岸施設が望めます。人工構造物に囲まれていながらも自然に包まれたような独特の静けさが感じられる釣り場です。都市的な喧騒とは無縁で、静かにチヌと向き合いたい釣り人にとって、じっくりと腰を据えられる隠れた好ポイントといえるでしょう。

海潟漁港

海潟漁港


アジを軸に、多魚種狙いが成立する大型港

 海潟漁港は、垂水市の中でも規模の大きい港のひとつで、釣り座の選択肢が多く、港内外で狙い方が変わるフィールドとなっている。足場は比較的落ち着いており、初心者からベテランまで利用しやすい港だ。
 この港で特に人気のターゲットはアジで、シーズンや回遊タイミングが合えば、サビキ・アジングともに釣果が期待できる。そのほか、アオリイカ・タチウオ・サバ・サゴシ・シロギスなど状況で入れ替わる回遊魚のほか、港外ではメジナ・チヌ・マダイといった磯寄りの魚も狙えるため、ライトゲームから本格的な仕掛けまで成立する幅の広さが特徴だ。
 また、周辺の潮通しや海底地形から、イシダイ・イシガキダイ・カワハギ・ベラ・カサゴ・マダコなどの底物系も期待でき、条件次第では青物の通過や夜間のタチウオ回遊も見られるなど、魚種が豊富な港といえる。
 釣り方は港内と外向きで性格が大きく変わり、港内は手堅く港外は状況勝負という構造。朝夕の潮変化やベイトの入り方が釣果差につながりやすく、時期によって港全体の雰囲気が変わる。

総評:海潟漁港は、アジを基軸としつつ、多魚種を視野に幅広い釣りが楽しめる“オールラウンド型の港”。状況読みと釣り方の切り替えが成果に直結するフィールドである。

元垂水港・垂水旧港

元垂水港・垂水旧港


港が三つ並ぶ町で、静かに楽しむチヌの釣り場

 垂水旧港と元垂水港は、錦江湾の中ほどに位置する、町に寄り添うような静かな港だ。海岸線からすぐ深く落ち込む姶良や霧島周辺と比べると、この一帯の海底地形は緩やかで、港としては穏やかな水深を持つ。
 この港には、昔から語り継がれてきた地元ならではの話がある。「もし桜島と大隅半島が陸続きにならず、昔の海峡のままだったら、この周辺の海は今とはまったく違う姿だったのかもしれない。」そんな憶測交じりの言葉が残るほど、この地域の海には、地形と時間の積み重ねが感じられる。
 港の歴史をひも解くと、時代ごとに役割が移り変わってきたことがわかる。最初に造られたのは、町の生活に寄り添ってきた垂水旧港。やがて利用が増えるにつれ手狭となり、補う形で元垂水港が築かれた。そして現在、フェリーや漁船が使う拠点は垂水新港へと移り、三つの港が海沿いに並ぶ姿は、町と海の歩んできた歴史を映している。
 釣り場としての表情は季節によって変わる。春は乗っ込みのチヌが寄り、夏から秋は小アジや回遊魚が港に入るタイミングがあり、夕まずめには軽い仕掛けでも楽しめる。また、垂水旧港と元垂水港の間を流れる河崎川の河口では、状況が整えばスズキが姿を見せることもある。港内で一年を通じて狙えるチヌは、この釣り場の主役といえる存在だ。
 狙いどころも港ごとに個性がある。堤防先端では、時折回遊してくる良型のチヌが竿を曲げる。港口周辺の船道は古くから知られた実績場所で、静かな港内の岸壁には居着きの個体がつく。足場が良く、フカセ釣り、ルアー、軽い仕掛けの釣りまで幅広く成立し、ベテランにも家族連れにも向いた懐の深い釣り場だ。
 派手な地形や劇的な潮流はない。それでも、四季の移ろいと、ほんの小さな変化に耳を澄ませながら竿を出してみると、この港が持つ独特の空気がゆっくりと馴染んでくる。通うほどに味わいが深まり、気がつけばまた訪れたくなる。
 垂水旧港と元垂水港、そして新港まで続くこの一帯は、そんな穏やかな魅力を持つ釣り場である。

垂水新港

垂水新港


足元は港、目の前は深場。アクセス良好で大物も狙える好ポイント

 垂水新港は、垂水市街地に近くアクセスしやすい港で、フェリー桟橋を併設した比較的新しい釣り場です。足場が安定している区画が多く、家族連れからライトタックルのアングラーまで利用しやすい点が魅力です。季節によって回遊魚・底物・アオリイカなど狙える魚種が幅広く、サビキ・ちょい投げ・エギング・ライトショアジギングなど複数の釣り方に対応できます。
 港の周囲には長い防波堤が沖へ伸びており、その外側は水深が一気に落ち込む急深地形になっています。海図を見ると、防波堤のすぐ沖側に20mラインが走っており、堤防周辺は潮が動きやすいポイントとなっています。この地形的特徴により、潮待ちするベイトが付きやすく、青物やハガツオ、タチウオ、大型アオリイカなどの回遊魚が接岸する可能性があります。港内側は砂地が中心で、キス・ヒラメ・マゴチなどのフラットフィッシュも狙える点も特徴です。
 総合すると、垂水新港は「アクセスの良さと沖向きの水深・潮流によるポテンシャルを兼ね備えた釣り場」です。ビギナーからベテラン勢まで幅広く楽しめ、条件が揃えば良型の回遊魚や大型イカを狙える点も魅力となっています。

柊原漁港

柊原漁港


砂地と浅場が育てる“季節ごとの釣りもの”。静かに狙える好フィールド。

 柊原(くぬぎばる)漁港は、垂水市南部に位置する静かな漁港で、港内・港外のどちらでも釣りが楽しめる小規模ながら変化のあるポイントです。港の外側には砂浜が広がり、投げ釣りでシロギスが狙える環境が整っています。足場の良い港内は、初心者やファミリーにも向いた釣り場です。
 ここでは、アジ・シロギス・チヌ・アオリイカが代表的なターゲットです。中でもアオリイカの実績が高く、県内でも知られた好ポイントです。水深はそれほど深くないため、満潮前後のタイミングが狙い目で、港内・外周どちらでもエギングが成立します。
 チヌは港内でも狙えますが、南側の港外側が特に有望です。ブッコミ釣り(置き竿スタイル)での実績が高い点が特徴です。根掛かりしにくい地形のため、初心者でも挑戦しやすい釣り方です。港内奥の岸壁周辺では、マダコが釣れることがあり、タコエギや探り釣りで狙う釣り人もいます。
 また春頃には、南側堤防の外側へサヨリが接岸することがあるため、タイミング次第でウキ釣りが成立します。秋にはアジや小型青物が港周辺に回り、ライトゲームやサビキ釣りも楽しめます。
 全体として、柊原漁港は「砂浜・堤防・浅場・季節回遊」の要素がコンパクトにまとまった釣り場です。混雑も少なく、落ち着いて釣りたい人や、釣り方を変えながら季節ごとのターゲットを楽しみたい人に向いています。

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